必要のない土地だけを相続放棄できるか
1 相続放棄は全てを放棄することになる
相続放棄は、亡くなった人の預金や土地などのプラスの財産も借金などのマイナスの財産も全て放棄します。
そのため、自宅だけ相続して、田舎の価値のない畑は放棄するというように、必要のない土地だけを放棄するということはできません。
2 限定承認は相続する借金を減らすだけ
相続の種類には、
①単純承認
②限定承認
③相続放棄
の3種類があります。
限定承認は、名前から相続する財産を選べるように思えてしまいますが、あくまでプラスの財産は全て相続したうえで、マイナスの財産の相続する上限額を決めて限定する手続きです。
そのため、限定承認でも必要のない土地だけを放棄するということはできません。
3 必要ない土地だけを手放す方法
必要のない土地を手放す方法はいくつかありますので、ご紹介します。
⑴ 相続土地国庫帰属制度を利用する。
相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月から始まった制度で、相続した土地を手放して国に引き取ってもらう制度です。
法務局に申請することで、必要のない土地だけを手放すことができます。
ただし、制度を利用するにはいくつかの条件があり、この条件が厳しいため、利用の難易度は高い制度です。
制度の利用条件の一例
①共有者全員で申請する必要がある。
→相続した兄弟が複数いる場合は、兄弟全員の同意が必要。
②土地の上に建物がないこと
→建物がある場合は、数百万円の費用をかけて取り壊してから制度申請をする必要。
③隣地との境界が明確であること
→場合によっては、隣地所有者から合意書にサイン等を貰う必要がある。
④成形された更地であること
→崖地、勾配がある土地、工作物が残っている土地は制度利用できず、更地にするには多額の費用が掛かることがある。
⑵ 地方自治体に寄付する。
地方自治体に土地を無償で寄付するできる場合があります。
もっとも、管理が容易な土地であれば寄付を受け入れてくれるケースもありますが、管理が困難な土地の場合は寄付の受け入れを断られてしまう可能性もあります。
(管理が困難な土地ほど手放したいので、難しいところです。)
⑶ 専門業者に買い取ってもらう
山林や田畑など、個人では利用が難しい土地を専門に買取等を行っている業者はいくつかあります。
そのような業者に土地を譲ってしまうことで手放す可能性はあります。
また、価値がほとんどないか、場合によっては管理費の方がかかる場合は、こちらが費用を払うことで引き取ってもらえる場合もあります。